伊藤貫セミナー(文字起こし)
伊藤貫セミナーを文字起こししました。多少わかりやすくするため、自分の言葉も交えています。動画を視聴する際の補助として、ご活用ください。
第1回 セミナーを始めました
皆さんこんにちは、いとう かん です。
●自己紹介
1953年東京生まれです。
国際政治学者として、主にワシントンに長く滞在し、ロビーストや金融にも関わりました。
日本のジャーナリストや国際政治学者のレベルが低いので、世界水準の国際政治の講義をします。
特に、若い方(40歳以下)の方々に、大いに勉強していただきたい、と念じています。
私の見立てでは、日本は5年から15年以内に、中国に飲み込まれてしまいます。
アメリカの力が低下しているからです。
日本の外務省も自衛隊もアメリカ軍の指揮下に入れば、守ってもらえる、と、考えています。
(岸田総理:当時)。だが、この考えが間違っているのです。
●このセミナーについて
ボランティアで、開催しています。
編集も経営科学出版の若い方方が、無償でやっています。
月に2、3回のペースで展開していきます。
●なぜ、伊藤貫セミナーを始めたか?
理由は5つあります。
1)日本の国際政治の分析が、右も左もレベルが低い。
新聞・テレビは、右も左も「まともな分析」を国民に提供できていない。
そのため、国民の国際政治への見方ができていない。
日本のジャーナリスト・国際政治学者は、アメリカの実情を理解できていないため、
自民・外務省・自衛隊は、
「アメリカの下部組織になれば、アメリカが守ってくれる」
と考えているが、その考え方は、浅はかであり、危険である。
なぜアメリカは、ソ連・中国・北朝鮮が日本に攻めた時、本気で戦う気がないのか?
その答えを、本日の最後に提示します。
だから、「自衛隊に統合本部をつくり、それが米軍の指揮下に入れば、日本は安泰だ!」
と言う「自民党政権の政策の間違い」を正したい。これが、第一の理由です。
2)このセミナーの半分は、国際政治学、哲学、宗教等について大学の講義レベルです。
でも、残りの半分は、ゴシップも交えて軽い話もいたします。
対象のオーディエンスは、40代、50代以下を想定しています。
その方々に刺激を与えて、ご自身で勉強していただきたい。
これが、二つ目の理由です。
3)国際政治状況の悪化です。米軍による世界支配が行き詰まってきた。
「このままで、行くと最悪で4年後、良くて15年で日本は、中国の支配圏に取り込まれて
しまう」と、私は考えている。
ワシントンには、同じ考えの方が多くいる。
5年後か15五年後に日本が滅びるのであれば、少なくともワシントン在住の僕が、
きちんと皆さんに、お伝えすべき事を伝えておきたい。
今、70歳だけど、死ぬ前にもうちょっと、まともな事をやった方がいいんじゃないか。
これが、3つ目の理由です。
4)物事を考えるには、いくつかの階層がある。そのことを皆さんに提示し、ブレない思考力を
身につけていただきたいのです。
ちょっと、面倒な話だけど・・・。
「浅い考え方」から「深い考え方」がある。
ものを考えるには、3つのレベルがある。3つのP。
①philosophy(フィロソフィー):哲学的、宗教的レベル(抽象度が1番高い)
②paradigm(パラダイム):パラダイムレベル(学派の違い)
例)経済学(古典派、マルクス経済学、オーストリア学派、シカゴ学派・・)
どのパラダイムを使うかで、金融政策も正反対になる
<アメリカでは外交雑誌でも、オープンに1990年から「日本は自主防衛力を持つべきだ」との論調があった。自主防衛する必要がある。>
僕は、この考え方を支持します。
それは、僕には二つのパラダイムがあるからです。
【パラダイム1】
国際政治学の「バランス・オブ・パワー」を重視する「リアリスト学派」です。
【パラダイム2】
核戦略理論では、「最小抑止(minimum deterrence)」です。
つまり、「どの国も、必要最小限の(数百発の戦略核弾頭)を持つべきだ。
それだけの核を持てば、それ以上持つ必要はない」との考えです。
自身は、この立場を支持します。
もう一つの核戦略理論に、「カウンター・フォース(Counterforce)理論」があります。
これは、冷戦時代に米ソが互いに何万発ものミサイルを保有し、人類全体を何回も死滅させる武力を保有する、考え方です。この理論は、現在でも米ソでは採用されています。
しかし、私は、
1980年代からこの「カウンター・フォース理論」は、ウソだ!
と考えてきました。
● さて、アメリカは、戦後日本の核武装を阻止してきました、ね。
たとえ周辺国(ソ連、中国、北朝鮮)が、日本をターゲットに何千発の核ミサイルを備えても
「決して日本にだけは、核武装させない」政策を継続してきました。
なぜか?
米国は、何万発もの核ミサイルを保有し(「カウンター・フォース(Counterforce)理論」)
日本は米国の核の傘で日本は守られている」から、と説明してきた。
しかし、アメリカは、日本のために、ソ連、中国、北朝鮮と核戦争をすることはあり得ません。それは、「最小抑止(minimum deterrence)」の議論をすれば、そんなことあり得ないよ。と、簡単に言えます。
「カウンター・フォース理論」を受け入れてしまうと、44段階に亘って
核ミサイルの撃ち合いをエスカレートして、アメリカが最終的に勝利するから、だから、日本は、アメリカに頼っていいんだ・・・と、説明する。
驚いたことに、日本の防衛省とか自衛隊には、そういうバカな議論を本気で信じている人がいるんです、よ。
だから、また、パラダイムの話に戻りますが。
どのパラダイスを使っているのか? どの学派の考え方なのか?
これが、実は、ものすごく大切なんです、ね。
パラダイムを使わないで、「核兵器は嫌だ。核兵器は怖い。あんな非人道的な兵器は持つべきではない。」とかね。
あるいは、
「日本は、世界で唯一核戦争犯罪の犠牲者になった国だから、日本は世界に向かって、核兵器の廃絶を訴え泣けらばならない」と、岸田総理みたいに、ね。と言う人が多い。
パラダイムも何も勉強しないと、こうした情緒的な
・あんなひどい武器は持ちたくない、とか
・日本は酷目にあったのだから、とか
・広島の悲惨さを世界に訴えかければ、核兵器はなくなる、とか。
岸田総理みたいに、信じられないくらい幼稚が議論しかできなくなる訳です。
●どのパラダイムを自分が使っているのか?を意識しないと、きちんとした、責任ある議論はできないのです。
繰り返しになりますが、3つのレベルの議論とは、
フィロソフィーカルな議論。パラダイムレベルの議論。一番最後が、ポリシーレベルの議論です。
ポリシーレベルの議論とは、誰でもできる議論なんです。
この政策をすれば、得するか、損するか。この政策は、好きか、嫌い、か?
そうすると、フィロソフィーカルな思考バターンを持っていない人やパラダイムレベルの思考バターンを持っていない人たちでも、ポリシーレベルの議論は、できる訳です。
マスコミに出てくる新聞記者とか、評論家が、やってる議論ってのは、ほとんどが、このポリシーレベルの議論です。
それで、
驚くべきことに日本の大学教授と言うのは、
このポリシーレベルの議論しかできない人がすごく多いんです、よ。
日本の大学教授らにとって、「フィロソフィーカルな議論」や「パラダイムレベルの議論」は、面倒だからやらなくていい。
具体的な、ポリシーレベルの議論だけ教えれば良い、と、考えている節がある。
このポリシーレベルの議論は、一見すると、具体的だから。わかりやすいのですが、
目の前の状況が変わると、グラグラッと全部、条件ごとに再構築しなければならなくなります。
要するに、一貫性がなくて、目先の現実に追いまくられて。
長期的に続けられる政策がどうかを考えないで、短期的な弥縫策(びほうさく)を、その場限りのやり方を続けていく、ことになるのです。
●残念ながら、日本のマスコミと政治家の議論は、ポリシーレベルの議論です。
非常に残念ですが、エリート官僚・高級官僚と言われている人たちも、実は、ポリシーレベルの議論しかできない人がすごく多いんです。
●僕は、外国に住み始めて5.6年目に、これはどうも。
ものの考え方と議論のやり方には、
①哲学的、宗教的レベル(抽象度が1番高い)
②パラダイムレベル(学派の違い)
③ポリシーレベル
の3つがあって、この3つをハッキリさせないと、
安定性のある議論・長期性のある議論ができないのではないか?
と、気がついた。
●今回のイトカン・セミナーをやるに当たって。
皆さんに、「この3つを分けるとは、どういうことか」を分かっていただけることを希望して開催します。
5)セミナーを開催する五つ目の理由
現在、日本でも、ヨーロッパでも、アメリカでも、グローバリズムと
ナショナリズムの戦いが、先鋭化してきています。
アメリカでもヨーロッパでもナショナリズムを応援して、グローバリズムを崩して行こう、とする動きが出てきた。
僕は、グローバリズムに反対する勢力に同意することが多いのですが、しかしながら、ナショナリズムに簡単に賛成する立場ではない。
で、日本の政治なり言論が、左翼VS保守。左翼VS右翼。保守VSリベラル派。体制派VS反体制派に分かれると。
僕は、2つに分かれてしまう考え方は、あまりに安易ではないか、
と思う立場なんですね。
僕自身の立場は、気取った言い方に聞こえるかもしれませんが、
古典主義的、正統主義的な考え方です。
だから、今述べたどの分類にも属さない考えが多いのです、ね。
●なぜ、私が、そうした分類に属さないのか?
その理由は、このセミナーを通して、徐々に明らかにしていくつもりです。
以上が、第一回目の伊藤貫セミナーのおおよその内容です。
ではなぜ、自身のブログにこの文字起こしをしたのか?その理由を説明します。
私の問題意識は、高校生の時に日本の食料自給率のグラフを見た時に始まりました。先進国で、日本だけが、右肩下がりだった。自国の食糧を自給できなと、戦国時代の戦が多く「兵糧攻め」で決したことを考えると、ただ事ではない。
政治的な自立を勝ち取るには、食料は、自国で完全自給しなくてはならないのに。と。
それを調べるために、農業経済学を学びました。そして、GHQ以降巧みに、子供の舌を変えさせる「キッチン・カー」から始まり、学校給食をパンと牛乳にしたのです。
つまり、アメリカの遠大な巧妙な罠に嵌められたのです。
拙著『がん温熱療法』は、がん治療の本だけではないのです。日本の独立を守りたいのです。がんは、作られた病気です。アタなの外部環境も巧みに、悪化された。
社会システムが、病気を生み出す社会に改変された。だから、諸外国で禁止になった抗がん剤が、農薬が、日本でだけ野放しなのです。
そうした議論をするための、知的トレーニングとして、伊藤貫セミナーは、最強の動画だと感じて、文字起こしを始めました。